ダラムサラの空想料理店  その2
ルンタ・レストランについて知っていることを書きます。

ボクの友人の中原一博は1980年代にダラムサラに移住しました。大学でひとりチベット宗教建築を学んでいた頃から在日チベット人との交流がはじまり、大学卒業後ダラムサラの亡命政権からの招請状を受け取り現地に赴きました。仕事はもちろん亡命政権の様々な施設の設計です。その後、設計分野では多くの仕事を続け現在に至っていますが、建築家としての仕事の他にも亡命チベット人のために献身的に尽くしています。そんな流れのなかからダラムサラに滞在する日本人たちが自然に難民自立支援のNGOを立ち上げようということになったのだと思います。

1999年9月、ルンタ・プロジェクトの拠点になる4階建ての立派なルンタ・ハウスが完成します。完成に至るまでに多くの寄付が寄せられましたが、最後の決め手になったのがミュージシャンの浜田省吾さんからの寄付でした。というのも浜田さんと中原君とは広島時代の悪友でいっしょにバンドを組んだ仲でもあったそうです。ちなみに浜田省吾さんは難民の子弟が学ぶ”Tibetan Children’s village”にも多額の寄付をされ、”Shogo Home”と名付けられたホームがあり、30数人の子どもたちが共同生活を送っています。

こうした背景のなかからルンタ・プロジェクトならびにルンタ・レストランが生まれたのです。

さて、ルンタ・レストランではどんなチベタンが働いているのでしょう?
ルンタ・ハウスで働く人たちは原則としてヒマラヤを越えて亡命して来た人々です。
それぞれ個人的背景は違っても、みなあまりに苛酷な体験をしている人々です。

例えばパッサン・ドルジェの場合。
パッサンはレストランの厨房で働く男、写真でわかるようにいつもテンガロンハットをかぶりおかしな髭を生やした伊達男風で厨房ではいつも陽気に歌いながら仕事をしています。
しかし、パッサンも凄まじい経歴を持っています。

彼はチベット本土のガンゼ地方で生まれ15歳のときに自ら欲して僧侶になり、やがてガンゼの街頭にチベット独立の貼り紙を貼った罪で捕まり、6年半の刑を言い渡されました。
パッサンは後ろ手に縛られ親指に錠をはめられ、さまざまな拷問を受けましたが中国公安には妥協することなく良心を貫きました。その結果は極度の衰弱により見るに堪えない状態になりました。監獄では窓のない独房に手錠と足かせをかけられたまま1年も入れられました。その状況がどんなに悲惨なものだったか想像してください。6年半の刑期中にはさらに苛酷な仕打ちを受け続け衰弱の度合いは増すばかりでしたが、なんとか刑期を終えて外に出ることができましたがふたたび僧衣をまとうことを禁じられました。
その後も何度も警察に捕まり拷問を受けるという苦難の日々は続きましたが、2004年11月、生きているのが不思議という状態でヒマラヤを越えてネパールへ逃れ、そしてインド・ダラムサラへ到着できたのです。
レストランで陽気に働くパッサンを見ていると彼がこんな苛酷な体験をしているなんて想像することさえできまません。しかし、パッサンの体験はここダラムサラでは決して珍しいことではないのです。

ルンタ・レストランはいつも色々な人種の人々で賑わいボクにとっては理想的な空想料理店の雰囲気を持っていますが、実はこうした体験を持ったスタッフによって支えられているのです。

この日記は去年いっしょにチベット支援イベントの実行委員を担ってくれたmao☆さんのブログ「たまゆら雑記」から引用させていただきました。彼女はイベント終了後すぐにダラムサラに行き多くの亡命者にインタビューしてくれたのです。2008年9月と11月の記事に彼女がインタビューした記録が「証言」として掲載されています。みなさん、ぜひお読み下さい!
http://newborder.exblog.jp/m2008-09-01/
http://newborder.exblog.jp/m2008-11-01/

写真上:一見陽気な伊達男、パッサン・ドルジェ、いい男です。

写真中:やはり厨房で歌いまくるツェリン・テンパ、彼も少年時代の僧侶となりましたが、独立を訴えるデモに参加し捕らえられ、その後インドに亡命してきました。

写真下:厨房でおいしいパンやケーキを焼いているガワン・トプチェ。彼も元僧侶でしたが、彼の僧院にダライ・ラマ法王の写真を掲げたという理由だけで捕まり11年の刑を言い渡されましたが、監獄での拷問による衰弱が激しく追い出されるようにして病院に入れられ、その後亡命に成功しました。

(写真もmao☆さん撮影です、ありがとうございました)
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by kuukuu_minami | 2009-04-17 13:42


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